「Microsoft 365を契約したのに、気づけば社内でTeamsを使っているのは一部の部署だけ……」
中小企業のIT担当者やご経営者から、こうしたご相談をよくいただきます。契約そのものは、それほど難しくありません。プランを選んでアカウントを発行すれば、Teams や SharePoint を使い始められる状態にはなります。問題は、そこから先です。
実際、当社にご相談いただいた建設業のお客様も、最初のご要望は「Microsoft 365を導入したい。また、導入後に定着できるか不安なためサポートしてほしい」というものでした。導入することそのものより、そのあと現場で使われ続けるかどうかを不安に感じている企業は少なくありません。
はじめてITどっとこむでは、「導入すること」よりも「使われ続けること」を支援の中心に置いています。今回は、Microsoft 365が使われなくなってしまう理由と、定着に向けて実際にどう進めているのかをお伝えします。
なぜ「導入したのに使われない」が起きるのか
ご相談をうかがっていくと、原因はおおむね3つのパターンに整理できます。
理由1:「導入すること」がゴールになっている
ベンダーや代理店から勧められるまま契約し、初期設定だけ済ませて「あとは各自使ってください」という形で現場に渡してしまうケースです。何のために導入したのか、どの業務がどう変わるはずだったのかが現場に共有されていないと、社員は「今までのやり方でも困っていないのに、なぜ変える必要があるのか」と感じてしまいます。目的が曖昧なまま新しいツールだけが増えると、定着はまず起きません。
Microsoft自身がサービス導入フレームワークを公開しており、導入を「開始」「実験」「スケーリング」の3つのフェーズで進めることを示しています。しかも最初の「開始」フェーズでやるべきこととして挙げられているのは、設定作業ではなく組織の目標を集め、戦略と展開計画を作ることです。契約して配って終わり、という進め方は、提供元であるMicrosoftも想定していないわけです。
理由2:ツールの使い分けが整理されていない
Microsoft 365には、Teams、SharePoint、OneDrive、Outlookなど、用途が近く見えるツールが複数含まれています。「連絡はTeamsで、資料はSharePointで」という整理がないまま導入すると、「これはどこに置けばいいんだっけ」と迷う場面が増え、結局は使い慣れたメールやExcel、あるいは個人のチャットアプリに戻ってしまいます。選択肢が多いことは、使う側にとってはむしろ負担になり得ます。
理由3:運用ルールが明文化されていない
チームの立て方、ファイルの命名規則、チャットとメールの使い分けなど、細かなルールが決まっていないと、部署やメンバーごとに使い方がバラバラになります。ある部署では活発に使われていても、別の部署ではまったく触られていない、という状態は珍しくありません。属人化したまま時間が経つと、「うちの会社には合わなかった」という結論に落ち着いてしまいがちです。
定着させるための4つの実践ステップ
原因が見えると、やるべきことはシンプルになります。当社がMicrosoft 365の導入支援でご一緒するときの進め方をご紹介します。
ステップ1:現状のヒアリングから始め、「本当に最適か」を確認する
いきなりツールの設定に入るのではなく、まず社内で今使っている連絡ツールや社内サーバーの状況をうかがうところから始めます。そのうえで、Microsoft 365の導入が求めている運用にとって本当に最適かどうかを一緒に検討します。
導入ありきで進めないこと。ここを飛ばすと、「入れたけれど既存のやり方と噛み合わない」という状態になりやすく、結果的に使われなくなります。プランの選定や、構築を依頼する会社の紹介まで含めて、この段階でご相談いただくことも多くあります。
ステップ2:使い分けのルールをシンプルに決める
「社内の即時連絡はTeamsチャット」「案件ごとの資料保管はSharePoint」「社外とのやり取りはOutlook」というように、迷いが生まれない程度の粗さでルールを決め、明文化します。細かく決めすぎるとルール自体が守られなくなるため、最初は3〜4個の大きな分類にとどめるのがコツです。
判断に迷ったときは、Microsoftの公式な整理に立ち返ると決めやすくなります。Teams、SharePoint、OneDrive を使用した共同作業では、Teamsは「プロジェクト指向のチームが、会話やファイルでの共同作業、会議を行う場」、SharePointは「クラウドにファイルを保存し、チームや組織と共有し、アクセス許可を管理する場」、OneDriveは「個人のファイルを保存・同期する場」と説明されています。
特に混同されやすいのがSharePointとOneDriveです。共有するものはSharePoint、自分だけのものはOneDrive、と最初に線を引いておくだけでも、ファイルの行方不明はかなり減ります。
ステップ3:操作マニュアルを作り、社内説明会をセットで行う
マニュアルを配るだけ、あるいは説明会をやるだけ、ではどちらも定着しにくいというのが実感です。手元で見返せる資料と、その場で質問できる場の両方をそろえておくと、現場が最初の一歩を踏み出しやすくなります。
マニュアルは「Teamsの使い方」という機能単位ではなく、「見積書を回覧するときの手順」のように、実際の業務の流れに沿って作ります。機能単位の説明書は読まれませんが、自分の仕事に直結する手順書は、迷ったときに見返してもらえます。
ステップ4:導入後も定着状況を確認し、改善につなげる
導入して終わりにせず、実際にどれくらい使われているかを確認し、改善につなげます。使われていない部署があれば、その理由をヒアリングし、個別に使い方をすり合わせていきます。
確認するタイミングに、決まった正解はありません。繁忙期の重なり方や部署ごとの立ち上がりの差によって、適切な時期は会社ごとに変わります。導入直後に一度見ておいたほうがよい会社もあれば、しばらく運用してから振り返ったほうが実態が見える会社もあります。
大切なのは時期そのものよりも、「導入後に確認する」という工程を、最初から計画に組み込んでおくことです。ここが抜けていると、使われていない状態に気づくのが半年後、ということになりかねません。
支援事例:建設業・従業員200名の企業様の場合
実際にご支援した例をひとつご紹介します。従業員約200名の建設会社様で、ご要望は「社内の基幹システムとしてMicrosoft 365を導入したい。また、導入後に定着できるか不安なためサポートしてほしい」というものでした。
まず、社内で使用中の連絡ツールや社内サーバーなどのヒアリングから着手し、Microsoft 365の導入が求めている運用にとって最適かを検討。プランの選定や構築会社の紹介を含め、検討から導入までをまるごとサポートしました。
その後は、メールツールのOutlookとチャットツールのTeamsについて、導入前リサーチ・テスト運用・社員研修・導入・導入後の定着サポートまで、具体的な業務に落とし込むところまで伴走しています。いきなり全社に展開せず、テスト運用をはさんでいるのは、先ほどのMicrosoftのフレームワークでいう「実験」フェーズにあたります。ここで実際の業務との噛み合わせを確認してから広げたほうが、結果的に早く根づきます。
「新しいツールを入れる前に、今あるものを把握する」
この企業様とは、Microsoft 365の導入とあわせて、社内のIT資産を整理する取り組みもご一緒しています。
当初は「各IT機器、ITツールが乱立し、バージョンや期限、アカウントなどの管理が社内で出来ていない」という状態でした。そこで、ソフトウェア・サーバー・パソコン・プリンターなどのITリソースをすべて可視化し、契約状況や導入数、利用期限を把握したうえで、導入から運用、廃棄までのサイクルを管理できる台帳を作成しました。
新しいツールを導入する前に、今あるものを把握しておく。遠回りに見えますが、これが結果的に定着への近道になることは少なくありません。何がどこにあるか分からないまま新しいツールを足しても、現場の「乱立している」という感覚は変わらないからです。
自社だけで定着させるのが難しいと感じたら
ここまでご紹介したステップは、どれも特別なことではありません。ただ、日々の業務と並行しながら「現状のヒアリング」「使い分けのルール設計」「マニュアル作成と説明会」「導入後の定着確認」までを社内だけで回すのは、担当者お一人やお二人の体制では負担が大きいのも事実です。
はじめてITどっとこむでは、Microsoft 365の導入設計・初期設定から、Teams / SharePoint / OneDrive の使い分け設計、運用ルールの明文化、操作マニュアルの作成と社内説明会、そして導入後の定着状況の確認と改善提案まで、一連の流れを伴走してサポートしています。「契約はしたけれど、この先どう浸透させればいいかわからない」という段階からのご相談も歓迎です。
30分の無料相談を受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。
参考にした資料
- Microsoft Learn「Microsoft サービス導入フレームワークを使用して、企業における導入を促進する」
- Microsoft サポート「Teams、SharePoint、OneDrive を使用した共同作業」


