「そろそろルーターを替えたほうがいい気はするけれど、まだ動いているし……」
ネットワーク機器の買い替えは、後回しにされやすい投資です。パソコンのように一人ひとりが毎日触れるものではなく、サーバー室や天井裏で黙って動いているため、不調に気づきにくいという事情もあります。
実際、当社にご相談いただいた建設業のお客様も、ルーターやハブの老朽化によって通信速度の低下や安定性に不安を感じながら、「どこに頼むべきか」「何を基準に選ぶべきか」が定まらないまま、対応が先延ばしになっていたという状態でした。
判断の基準がないから決められない。決められないから先延ばしになる。この記事では、その基準をどこに置けばいいのかを整理します。
まず、「法定耐用年数」は買い替えの目安になりません
最初に、よくある誤解をほどいておきます。
「減価償却が終わったら買い替え」と考えている企業は少なくありません。ただ、これを買い替えの判断基準にすると、かなり危うい運用になります。
そもそも、ネットワーク機器の法定耐用年数は「何年」と一律に決まっているわけではありません。国税庁のLAN設備の耐用年数の取扱いに関する質疑応答によれば、かつてはLAN設備をひとまとめにして償却する扱いがありましたが、平成13年4月1日以後はこの取扱いが廃止され、個々の機器ごとに、その機構や機能に応じた耐用年数を判定することとされています。自社の機器が何年に当たるかは、構成によって変わります。
そして、より本質的な問題があります。法定耐用年数は、あくまで減価償却の計算に使う税務上のルールだということです。機器がその年数だけ問題なく動くという保証でも、その間ずっと安全に使えるという意味でもありません。帳簿上の数字と、現場で使い続けてよいかどうかは、まったく別の話です。
実際、後述するように、買い替えを判断すべき最大の理由は年数ではなくメーカーのサポート終了です。こちらは購入から何年かではなく、機種ごとに決まっています。
では何を見ればいいのか。実務では、次の5つを目安にしています。
買い替えを検討すべき5つのサイン
サイン1:メーカーのサポートが終了している(最優先)
もっとも重要な判断材料です。メーカーのサポートが終了した機器には、脆弱性が見つかっても修正プログラムが提供されません。つまり、穴が開いたまま塞げない状態で使い続けることになります。
まだ正常に通信できているかどうかは関係ありません。サポートが切れた時点で、その機器は買い替えの検討対象と考えてください。お使いの機器の型番でメーカーサイトを検索すれば、サポート終了予定は公開されています。
サイン2:通信が遅い、時々切れる
「夕方になると重い」「特定の場所だけWi-Fiが不安定」「たまに切れるが再起動すれば戻る」といった症状です。
再起動で直ってしまうため放置されがちですが、機器の処理能力が現在の通信量に追いついていないか、内部の部品が劣化しているサインであることが多いです。「再起動すれば直る」を繰り返している時点で、すでに兆候は出ています。
サイン3:社内に何台あるか、誰も正確に把握していない
台数や設置場所、契約状況が分からなくなっている状態は、それ自体が危険信号です。把握できていないものは、更新も管理もできません。
この状態は珍しくありません。先ほどの企業様も、Microsoft 365の導入とあわせてIT資産の整理に取り組まれた際、当初は「各IT機器、ITツールが乱立し、バージョンや期限、アカウントなどの管理が社内で出来ていない」という状況でした。買い替えの前に、まず棚卸しが必要なケースです。
サイン4:働き方が変わったのに、構成が当時のまま
数年前と比べて、無線でつなぐ端末が増えていませんか。オンライン会議の頻度は変わっていませんか。社外から社内につなぐ機会は増えていませんか。
機器そのものが壊れていなくても、求められる役割が変わっていれば、構成は合わなくなります。 有線前提で組んだ環境に無理やり無線を足していくと、機器は正常なのに遅い、という状態が生まれます。
サイン5:保守契約が切れている、またはそもそも結んでいない
故障したときに誰が対応するのかが決まっていない状態です。ネットワークが止まると業務全体が止まるため、復旧までの時間がそのまま損失になります。「壊れてから探す」では、その間ずっと業務が止まります。
「壊れてから」では遅い理由
ネットワーク機器の買い替えを先延ばしにするリスクは、業務が止まることだけではありません。
警察庁が公表した令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等についてによると、令和7年のランサムウェア被害の報告件数は226件で、組織の規模別に見ると中小企業が約6割を占めています。そして被害組織へのアンケート結果では、侵入経路はVPN機器が6割以上を占めるとされています。
つまり、攻撃者が入ってくる主な入り口は、社員のパソコンではなくネットワーク機器そのものだということです。
ここから言えるのは、サポートが終了して修正プログラムが提供されなくなった機器を使い続けることは、その入り口を開けたままにしているのと変わらない、ということです。「まだ動いているから」という理由で使い続けている機器が、そのまま侵入口になり得ます。
大企業ではなく中小企業が被害の6割を占めているという点も、押さえておきたいところです。「うちのような規模は狙われない」という前提は、統計とは合っていません。
買い替えを決めたあと、何で比べるか
買い替えを決めても、次に「何を基準に選べばいいか分からない」という壁が来ます。ベンダーから見積もりをもらっても、書式も内訳もバラバラで比べられない、というのはよくある話です。
当社がご支援するときは、製品の提案に入る前に、まず比較の軸を作ります。実際に使っている観点は次の5つです。
費用 — 機器費・作業費・保守費用を分けて把握する。総額だけを見ると、保守費用が入っていない見積もりが安く見えてしまいます。
方式 — 既存機器を交換するのか、新規に設置するのか。前述の企業様では、追加費用とリスクを評価したうえで、交換ではなく新規設置を選びました。
通信 — 有線と無線のバランス。今の働き方に合った構成になっているかを見ます。
プラン — VPNや回線増強など、機器以外に必要なものが含まれているか。
影響 — 既存システムへの影響。切り替え時に何が止まるのか、いつ作業するのかまで含めて確認します。
この軸を先に決めてから、3社以上の見積もりを一覧化して比較できる形に整えます。軸がないまま見積もりを並べても、結局は総額の安さだけで選ぶことになりがちです。
事例の詳細は以下でご紹介しています。合わせてご覧ください。
ネットワーク機器のリプレース支援|相見積もり・契約見直しまで対応
まずは現状を見るところから
はじめてITどっとこむでは、ネットワーク機器のリプレースについて、現状調査から相見積もりの取得、比較表の作成、工事の立ち会いまでを一貫してお手伝いしています。あわせて、回線・契約プランの見直しや、ベンダーとのやり取りの窓口を一本化する対応も承っています。
特定のメーカーの製品を売る立場ではないため、「本当に今替えるべきか」「そもそも替えなくていいのではないか」というところから、率直にお話ししています。
「古い機器が気になっているが、何から手をつければいいか分からない」という段階で構いません。まずは現状を把握するところから始めましょう。
30分の無料相談を受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。
参考にした資料
- 国税庁「LAN設備の耐用年数の取扱いに関する質疑応答」
- 警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(PDF)

