海外展開を視野に入れる事業主の方々に向けて、生成AI研修を3時間の講座として設計しました。前半は座学、後半はその場でアカウントを作って手を動かす実践。約40名の方にご参加いただきました。
講座の背景
今回担当したのは、駐神戸大韓民国総領事館と一般社団法人在日韓国商工会議所兵庫(兵庫韓商)が主催する「第13期 東アジア経営塾(SEA@BIZ)」。全6回のテーマは「ビジネスにおける戦略的マインドを学ぶ〜AI革命時代をどう勝ち抜くか〜」で、その第1回、生成AIの回をお任せいただきました。
受講対象は開業3年以内の事業主や、起業・新規事業を検討している方です。この層に向けた生成AI研修では、越えなければならないハードルが2つあります。
ひとつは、そもそも触ったことがない方が多いこと。総務省の情報通信白書では、日本の個人の生成AI利用経験は2024年度で26.7%。米国68.8%、中国81.2%と比べて大きく開いています。使っていない理由の上位は「自分の生活や業務に必要ない」40.4%、「使い方がわからない」38.6%。関心以前に、入口が分からない状態です。
もうひとつは、会社としてのルールがないこと。生成AIの活用方針を定めている企業は、大企業で約56%に対して中小企業では約34%。方針が決まっていないまま個人が使い始めると、情報漏えいや著作権の事故につながります。
このため「AIとは何か」の解説だけでは足りません。使えるようにすること、安全に使えるようにすること、そして海外事業という受講者の関心に接続すること。この3つを3時間に収める必要がありました。
生成AI研修として設計した6つのこと
座学と実践を半分ずつに配分
14時から15時35分までを座学、15時45分から17時までを実践に充てました。聞いて終わる講座にしないためです。休憩を2回挟み、座学の最後に質疑応答の時間を確保しています。
海外事業に絞って「なぜAIなのか」を説明
一般的なAI活用の話ではなく、海外事業を阻む壁を3つ(言語、情報収集のコスト、意思決定のスピード)に整理し、それぞれをAIがどう下げるかを示しました。
たとえば、翻訳と言い換えの違いです。日本語の「長年の実績と高い品質でご愛顧いただいております」をそのまま英訳した文と、「15年で200社以上を支援し、運用コストを平均30%削減」と数字に置き換えた文を並べ、相手に伝わるのはどちらかを考えていただきました。
このほか、市場リサーチを数時間から数分に短縮する使い方、英文契約書やNDAの懸念点を洗い出す使い方も扱いました。

主要ツールを比較し、使い分けの考え方を示す
「どれが一番すごいか」ではなく「何の仕事に使うか」で選ぶという前提で、ChatGPT・Claude・Geminiの3つを比較しました。それぞれの得意分野、できること、個人向け・法人向けの料金プランまで、出典と時点を明記した形で提示しています。
そのうえで、1つのツールで完結させずに連携させる使い方(調査はGemini、構成はChatGPT、資料化はClaudeなど)を、研修資料作成と提案書作成の2例で紹介しました。
安全に使うためのルールを独立した章として扱う
IPAの情報セキュリティ10大脅威2026で「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初選出で組織向け第3位に入ったことを起点に、事故を防ぐ3つの原則を整理しました。
- 出力は「下書き」として扱う(もっともらしい誤りが混じる前提で人が検証する)
- 入力した情報は「外部に出る」前提で扱う(機密・個人情報は入れない、匿名化する)
- 著作権と利用規約を確認する(商用利用の可否、依拠性の問題)
具体策として、入力禁止情報のリスト化、会社名や担当者名の匿名化のしかた、学習利用のオプトアウト設定、法人プランを選ぶ判断軸まで落としています。個人情報保護法第27条に触れる可能性がある使い方についても説明しました。
なお、この安全ルールの部分は自治体向けのITセキュリティ研修でお伝えしている内容とも共通しています。

アカウント作成から実務ワークまで手を動かす

実践編は、ChatGPTのアカウント登録をステップに分けて案内するところから始めました。認証メールが届かないときの対処など、実際につまずく箇所も含めています。
続いて、質問のしかたで出力がどう変わるかを5段階で体験していただきました。
ざっくり聞く → 条件を入れる → 形式を指定する → 追加指示で整える → 人間が確認する、という流れです。良い質問に共通する5要素(役割・前提・目的・形式・条件)も整理しました。
最後に、海外展開の検討場面を4つに分けたワークを実施しました。どの国から調べるか、その国で何につまずくか、どの方向で攻めるか、最初の6か月で何をするか。いずれも「海外専任の担当者がいない」「小さく検証する」という中小企業の実情を条件に入れています。
締めとして、AIの回答を事実と推測に分け、確認先を公的機関・業界団体・現地パートナー・専門家の4つに振り分ける考え方をお伝えしました。
「これから何が起きるのか」まで扱う
講座の終盤では、生成AIの現在地と今後の見通しにも触れました。AIが指示待ちのチャットから自律的に作業するエージェント型へ移っていること、職業単位ではなくタスク単位で影響が出ること、伸びるスキルと相対的に価値が下がるスキルの違いなどです。
当日の様子
約40名の方にご参加いただきました。


もっとも反応が大きかったのは、AIの誤りをAI自身に確認させられると分かった場面です。
座学のパートで、生成AIはもっともらしい誤り(ハルシネーション)を出すことをお伝えしていました。実践編では、返ってきた答えに対して「本当にその情報は合っていますか」と聞き返す使い方を試していただきました。すると、AIが自分の回答を見直して調べ直し、根拠となる情報を示してくる。ここで「そんなことができるのか」というお声をいただきました。
AIの答えを疑うことと、AIを使うことは矛盾しません。むしろ疑い方を知っている方のほうが、安心して業務に使えます。座学でお伝えしたルールが実践で腑に落ちたという意味で、3時間の中で一番手応えのあった部分でした。
もうひとつ関心が高かったのは、終盤のAIの今後の展望を扱ったパートです。AIが指示を待つチャットから自律的に作業を進めるエージェント型へ移っていくこと、職業まるごとではなく業務のタスク単位で影響が出ること、そのなかで人の側に残る役割は何か。ここは「なるほど」という表情で受け止めてくださる方が多く、目の前の操作方法だけでなく、数年先に自分の事業がどう変わるのかを考えたいという関心の高さを感じました。
生成AIの研修は操作の習得で終わりがちですが、実際に必要なのは「どこまで信じて、どこを自分で確かめるか」の判断軸です。今回の講座では、そこに時間を使った設計が受講者の関心と合っていたように思います。
実施概要
| 実施日 | 2026年6月13日(土)14:00〜17:00 |
| 実施時間 | 3時間(座学95分 + 実践75分) |
| 会場 | センタープラザ西館 会議室(神戸市) |
| 参加人数 | 約40名 |
| 対象 | 開業3年以内の事業主、起業・新規事業を検討中の方が中心。その他あり |
| 講座名 | 基礎から学ぶ生成AIのビジネス活用法 + 生成AI研修プログラム |
| 位置づけ | 第13期 東アジア経営塾(SEA@BIZ)全6回の第1回 |
| 使用ツール | ChatGPT(実習)/Claude・Gemini(座学で比較) |
| 資料 | 全134ページ(書き下ろし) |
| 主催 | 駐神戸大韓民国総領事館/一般社団法人在日韓国商工会議所兵庫 |
生成AI研修をご検討の方へ
今回の講座は、対象者の業種や関心に合わせて内容を組み替える形で設計しています。商工団体・自治体・企業内研修など、受講者に応じた構成でご相談を承っています。座学のみ、実践のみ、時間を短縮した形でも対応可能です。
30分の無料相談を受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。

