工事管理の台帳が Microsoft Access で作られ、社内の NAS に置かれていた建設会社です。事務所に居ないと開けず、勤怠の数字は毎回手作業で転記していました。
調べていくうちに、その業務が個人向けの Office アカウントで動いていることが分かりました。
Microsoft 365 Business Standard の法人契約に切り替えるまでに、移行先・勤怠ツール・ネットワーク機器・ライセンス構成をそれぞれ並べて比較し、そのうちいくつかは「今回は見送る」という結論を出しています。
お客様の概要
| 業種 | 建設業 |
| 従業員規模 | 20名程度(勤怠管理の対象は21名) |
| エリア | 関西 |
| 支援内容 | 現状の棚卸し/クラウド移行の設計/ツール比較/ライセンス選定/移行手順の作成 |
| 時期 | 2025年3月〜5月 |
1. 台帳は社内にあり、社外からは開けなかった
ご相談をいただいた時点で、こういう状態でした。
- 工事管理表が Access で作られ、社内の NAS に保存されている。事務所に居ないと開けない
- 勤怠の打刻データを、毎回手作業で工事管理表に転記している。担当の方しかできない
- 別系統の工事管理表は Google スプレッドシートにあり、こちらも手作業でつないでいた
「どこからでも開けるようにしたい」「特定の人しかできない作業をなくしたい」と2点ご要望をいただいていました。

2. 先に確かめたこと
ツールを足す前に確認したのは、今のアカウントのままで目的が果たせるかどうかでした。結果は「果たせない」でした。
- 個人向けのアカウントでは、法人で作った SharePoint リストと Access を正しくつなげない
- SharePoint 上のファイルを、個人の OneDrive と同期することもできない
つまり、何を導入するかの前に、アカウントを法人契約に変える必要がありました。ここを確かめずに機器やツールの話から入っていたら、途中で行き詰まります。
3. 何を比べて、何を選ばなかったか
私たちはメーカーや販売店ではないため、「入れる前提」で比較していません。

Access の移行先 — Dataverse と SharePoint を比べました。Dataverse は大量データや細かい権限設定に強い一方、別途ライセンスが必要です。今回のデータ量なら、Microsoft 365 に含まれる SharePoint で足りると判断しました。
勤怠の打刻方法 — 既存のクラウド勤怠を続ける/Power Apps で自作する/Microsoft Forms で代用する/在席管理サービスの機能を流用する、の4案を並べました。判断の条件は「CSV で打刻データを出せること」「スマホで打刻できること」の2つです。
ネットワーク機器(UTM) — 6社を初期費用・月額・機能で一覧にしました。ファイアウォールやURLフィルタリングなど10項目で横並びにしたところ、商工会議所のサイバーセキュリティお助け隊サービスが最も割安でした。
ライセンス構成 — 5パターンを年額で並べました。
| 構成 | 年額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 現状(個人向けOffice+NAS+リモート接続) | 約37万円 | 社外から開けない |
| 法人1アカウント+個人アカウント併用(下位プラン) | 約16万円 | 最安。デスクトップ版Officeは付かない |
| 法人1アカウント+個人アカウント併用(Standard) | 約17万円 | デスクトップ版Officeが付く |
| 法人5アカウントで全面移行(Standard) | 約21万円 | 個人アカウントを完全にやめられる |
※ 2025年時点の試算です。
安さだけを見れば下位プランですが、デスクトップ版の Office が付かないと、今の仕事のやり方が変わってしまいます。「一番安い構成」ではなく「今の働き方を変えずに済む構成」を選んでいます。
4. 本番のデータを触る前に、テストで通した
移行そのものは、いきなり本番の台帳を動かしていません。手順を4段階に分けています。
- 法人アカウントで Access を起動し、ローカルPCに保存したファイルを開く
- まずテスト用のテーブルを、法人の SharePoint リストへエクスポートする
- 「リンクテーブルとして追加」を選び、Access 側から開けるか・書き込めるかを確認する
- 問題がなければ、フォームやクエリの参照先を、元のテーブルからリンクテーブルへ切り替える
工事の台帳は、止まると現場が止まります。テストデータで一度通してから本番に移すという手順を挟んだのは、そのためです。
同時に、アカウントの使い分けも整理しました。移行の途中は、Access は法人アカウント、その他の Office は個人アカウント、という状態が生まれます。ここが混ざると「どちらで開いたか分からない」という事故が起きるので、どの作業をどちらで行うかを書き出してお渡ししています。

5. 導入したもの、見送ったもの
導入したもの — Microsoft 365 Business Standard を6ライセンス。Office を日常的に使う方の分を法人契約に切り替え、デスクトップ版の Office に加えて Teams・SharePoint・OneDrive が使えるようになりました。工事管理の台帳は SharePoint リストへ移し、Access からリンクテーブルとしてつなぐ構成です。
見送ったもの — ネットワーク機器の切り替えと、勤怠ツールの入れ替えは、提案までとしました。効果が見えやすいところから順に進めたい、というお客様の判断です。
6. どこの費用が減るのか
試算では年間およそ20万円の差が出ましたが、金額そのものより、何がなくなるのかのほうが大事だと考えています。
NAS を止めれば、機器のリース代に加えて電気代と保守の手間がなくなります。社内のファイルを社外から見るための接続サービスも、SharePoint と OneDrive に移れば要らなくなります。PC を買い替えるときも、Office 付きモデルを選ばなくてよくなるので、性能で機種を選べるようになります。
※ 各サービスの価格は改定されることがあります。金額は2025年時点の試算としてご覧ください。
7. 残っている宿題
この案件はまだ終わっていません。ネットワーク機器の見直しと、勤怠の打刻方法の一本化が、次の検討事項として残っています。
導入して終わりではなく、次にどこへ手をつけるかを一緒に決めていくのが、私たちの関わり方です。
同じ課題をお持ちの方へ
「社外から開けない」「あの人しかできない作業がある」という状態は、ツールを入れれば解決するとは限りません。まず今の契約と使い方を確認するところからお手伝いできます。
Microsoft 365 の導入・活用支援については、こちらのページで詳しくご案内しています。プランの選び方はBusiness Standard と Premium の違い、ファイルの置き場所の考え方はTeams・SharePoint・OneDrive の違いと使い分けをご覧ください。

